アラカルト第1回
第1回 トマト
夏野菜の代表選手「トマト」。
まずは、基礎data(1~5)から見てみましょう。
- 1. 名称について
- 『トマト』の語源はナワトル語でホオズキの実を意味する『tomatl』(トマトゥル)に由来する。
- 2.分類
- ナス科トマト属
- 3.原産地
- 南米アンデス高地
2012年の栽培面積:約1万2,000ha(ヘクタール) 年間出荷量:約64万4,500t(トン)
- 南米アンデス高地
- 4.主な産地
- 熊本県16%、北海道8%、愛知県・茨城県約7%、千葉県7%
- 5.種類について
- 世界では、8,000種を超える品種があるとされ、日本では農林水産省の品種登録情報ページによれば、120種を超えるトマトが登録されているとのことです。これは、野菜類の登録品種数の中でも、目立って多いのですが、雑種第一代(*注)のF1品種は登録されないことが多く、桃太郎などの有名な品種の登録はないそうです。
(*注)雑種第一代について「ウィキペディア」より
雑種第一代(ざっしゅだいいちだい、first filial generation)とは、生物において、ある異なった対立遺伝子をホモで持つ両親の交雑の結果生じた、第一世代目の子孫のこと。 F1 と略記される。 雑種第一代は両親の遺伝子をヘテロで持ち、遺伝子型は均一である。 雑種第一代の示す形質が両親のいずれよりも優れる場合、この現象を雑種強勢という。 逆に劣る場合には雑種弱勢と呼ばれる。 特に前述の雑種強勢を利用して、より有用な形質を伸ばす方向に品種改良されたものは一代雑種や一代交配種などと呼ばれ、家畜や農作物などの農産物の改良に応用されている。 |
トマトは大きさで分類すると、大玉、中玉、小玉があります。
また、色で分類すると生食向けの桃色、調理向けの赤色、黄色があります。
- (1)大玉トマト
一般的に流通している大きめのトマトの総称で、重さが150g以上のものが大玉トマトといわれています。
桃太郎(大玉トマトの代表品種)
タキイ種苗から1985年に発売されて以来、市場シェア1位を維持し、現在は初代桃太郎を改良した桃太郎シリーズの種が20種類以上も販売されているそうです。
2008年には橙黄色の「桃太郎ゴールド」が登場。
トマトの中でも特に食べられている品種で、生食用の桃色トマトの代表ともいえます。
私たちが食べているトマトと言えば、この桃太郎です。
甘みと適度な酸味があり、完熟すると真っ赤に染まるトマトです。
- (2)ファースト(大玉トマトの代表品種のひとつ)
果実の先がツンととがった形で、トマトを切ったときに現れる、ドロリとしたゼリー質が少ないトマトです。
果肉がしっかりとしていて、カットした際に実崩れしにくく、サラダやサンドイッチなどに向いています。
年明けから5月頃にかけて作られる、冬トマトのひとつです。
ファーストトマトはアメリカ系の「ポンテローザ」から生まれ、昭和10年代から長い間主力品種として栽培されていました。
現在はおもに愛知県で「レディファースト」や「スーパーファースト」などが栽培されています。
- (3)ミディトマト
大玉トマトとミニトマトの間の中玉サイズのものが「ミディトマト」と呼ばれます。
大きさは40~150g程度。
色は赤や黄、オレンジと多彩で、品種も「フルティカ」や「レッドオーレ」などさまざまです。
特に甘味の強いものは下で紹介している「フルーツトマト」とも呼ばれますが、これらに明確な区別はありません。
- (4)ミニトマト
3~4cmくらいで重さが20~30gほどの小さなトマトの総称。
「プチトマト」とも呼ばれます。
1980年頃から普及しはじめ、しばらくは赤いものが主流でしたが、最近は黄色やオレンジ色、紫色などバリエーション豊かになりました。
品種も「千果」や「サンチェリー」「キャロル」などさまざま。ミニトマトは甘味が強くひと口サイズなので扱いも楽で、サラダやお弁当の彩りに重宝します。
- (5)アイコ
「ロケットミニ」とも呼ばれる長細いミニトマトの品種です。果肉が厚めで歯ごたえがよくゼリー部分は少なめ。
甘味が強くて酸味はあまりありません。
サラダなどの生食はもちろん、加熱してもおいしく食べられます。
果皮の黄色い「イエローアイコ」という品種もあります。
- (6)シシリアンルージュ
イタリアのマウロ氏が育成したシシリア島生まれの生食調理兼用トマト。
20~30gくらいのミニサイズで、皮はかためですが、果肉はほどよいやわらかさでゼリー部分が少なく、甘味と酸味が適度にあります。
生食でもおいしいですが、加熱すると濃厚な味わいになり、パスタやスープなどに適しています。
- (7)フルーツトマト
大きさに関係なく、糖度が特別に高いものを総称して「フルーツトマト」や「高糖度トマト」と呼びます。
栽培時に水の量を抑えることで果実に糖度やうまみが貯えられ、フルーツのような甘くて濃厚な味わいになります。
糖度は一般的に8度以上で、サイズは普通のトマトよりも小さめで50~120g程度。
デルモンテの「フルーツルビーEX」やブランドトマトの「アメーラ」などがあります。
- (8)グリーン系トマト
グリーンハートは一見、完熟していないトマトに見えますが、果肉も皮もきれいなエメラルドグリーンのトマトです。
新野菜のひとつで、夏になるとデパートなどの野菜売り場で買うことができます。
果肉が固く、実が引き締まっているトマトで、甘みと酸味のバランスがよいです。
そのまま生で食べても、軽く焼いてもおいしいです。
また、ピクルスやマリネにも、おすすめです。
- (9)塩トマト
熊本県八代地域など土壌塩分濃度が高い干拓地などで栽培される特別栽培のトマトで、糖度が8度以上のものです。
果物並みに甘くフルーツトマトの元祖であり、しっかりした歯ごたえと一般のフルーツトマトとは全く異なる味を持っています。
- (10)加工用トマト
甘みが少なく、酸味のある赤色トマトの一種です。
加熱すると、甘みとうまみが引き立つタイプのトマトです。
果肉がしっかりとしているので、煮込みなどにしても崩れにくいのが特徴です。
有名なものに、サンマルツァーノがあります。
- (11)その他
ピッコラルージュ、ブラック系トマト、調理用トマトなどがあります。
「トマトの旬っていつ?」
トマトは、1年中食べることができますが、露地栽培トマトは6月~8月、ハウス栽培のトマトは2月~5月が特においしいと言えます。
トマトは、昼と夜の温度差が大きいほど、赤くておいしいものが収穫できます。
そのため収穫時期は、ハウス栽培が中心の冬春トマトと、露地栽培が中心の夏秋トマトに分かれます。
主な産地と時期は、次の通りになっています。
- 冬春トマト(7月~11月):熊本県、愛知県、千葉県
- 夏秋トマト(12月~6月):北海道、茨城県、福島県
冬春トマトは甘みが強く、夏秋トマトは酸味が強いので、季節ごとの味わいも楽しめますね。
「トマトにまつわる『ことわざ』」
栄養素が豊富な事から、日本における柿と同じく「トマトが赤くなると、医者が青くなる」という、ヨーロッパのことわざがあります。
「加工食品いろいろ」
トマトジュース、トマトケチャップ、トマトソース、トマトピューレ、ドライトマト(乾燥トマト)などがあります。
ドライトマトはサンマルツァーノなどの調理用トマトをじっくりと乾燥させたもので、酸味と旨みがギュッと凝縮されています。
塩味が強いのでぬるま湯につけて塩抜きしてから食べると良いと思います。
パスタやサラダなどに使うと、コクが出ます。
いつもの仕上がりがかわります。
「トマトピューレとトマトジュースの違いって?」
トマトピューレは、完熟したトマトを水で煮込み、裏ごししたもの。
基本的に味付けはしませんが場合によっては塩とローレルが加えられていたりもします。
ケチャップに比べ、調味されていないトマトピューレはパスタやピザ、スープなどいろいろな料理に利用しやすいです。
トマトジュースは、トマトを破砕して搾汁・裏ごしし、皮、種子等を除去したもの、または濃縮トマト(食塩以外のものを加えていないもの)を希釈して搾汁の状態に戻したものと、JASで定められています。
簡単に言えばトマトの汁ですね。
トマトピューレは水で煮ているのでトマトの汁とは言えませんね。